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104期卒業メンバーで調査兵団に入団した子どもたち。
正直、俺たちに言わせると誰もがガキンチョ。
どんだけ体格が良かろうが、どんだけ大人びててもガキンチョ。
師団長をさせられてるせいもあってか、人を見る目というのに優れている自信はある。
新しいリヴァイ班のメンバーを見ることがあったのでチラ見をしたとき。
言葉では形容しがたい雰囲気に気が付いた。
『何か諸刃の剣みたいな奴ばっかだな』
使い方を誤れば、こっちまで巻き添えになりそうな面子ばかり。
まあ、あのリヴァイが任命したんだから俺の口出しするじゃないんだが…。
責任は俺にないし、好きなように扱えば良い。
「ん?」
そんな異彩な顔触れの中に俺は首を傾げてしまった。
身長は俺と同じくらいだけど、まだまだ未成熟で華奢な身体つきをしてる。
顔は鼻筋が通っていて、少し生意気そうな目付きが印象的だ。
名前は…、何だったっけな?
少し記憶を辿りながら、俺は少年の名前を思い出した。
そう、ジャン・キルシュタインだ。
「何か変だな…」
異彩なメンバーの中で彼だけが余りに普通に見えたから。
だから、少しだけ興味が湧いただけの話。
機会があれば、一度は話してみたい。
どうして調査兵団に入団したのか、そんな話とかには興味がない。
俺は彼の人格に少しだけ興味が湧いただけ。
たった、それだけ。
「初めましてではないけど…、俺のことは覚えてるか?」
「憲兵団のナイル師団長、ですよね?」
愛馬の世話をしてる彼を見つけたもんだから気紛れに声を掛ける。
振り返った彼は直ぐに敬礼の姿勢をとるのを忘れない。
几帳面そうな性格してそうだし、これが当たり前ってヤツなのかもしれない。
それにしても影が薄いとか言われてるもんだから覚えられてることにビックリした。
まあ、自分で『影が薄い』と自覚してるから問題ないんだけど。
記憶力は良いってのは分かったし、頭の回転も速いんだろう。
「あんときは大変だったな」
「俺は俺に出来ることをしただけに過ぎません」
生意気なのかと思いきや、意外に謙虚で更にビックリした。
当たり前だが、それを顔には出すほど俺はガキンチョじゃない。
このガキンチョは本当にリヴァイ班でやっていけるのだろうかと疑問に思う。
リヴァイが結構な人情派で仲間意識の高い奴だと言うのは知ってる。
でも、こんな普通のガキンチョが新しいリヴァイ班として性能発揮をするのか。
普通といっても104期の卒業メンバーで10位以内なんだから優秀なんだろうけど。
「ナイル師団長、俺に用でもあるんでしょうか?」
「あのさ、あんまり畏まれるの好きじゃないんだよな」
「へ? あ、はい…」
「別に敬礼なんかしなくても良いし、その師団長とかも止めてくれ」
礼儀を重んじる厳しいヤツもいたりするけど、俺は余り気にしないタイプ。
寧ろ、畏まれると『面倒臭い』とさえ思ってしまう人間だったりする。
少し困惑してる彼に「敬礼は解いてイイけど?」とだけ告げた。
「俺、敬礼は相手を敬う行為だと思っています。
師団長の人を敬うことは不思議なことなんでしょうか?」
「敬うとこなんかある?」
「憲兵団の師団長というだけで敬うに値すると思いますが…」
「運が良いだけさ、俺は」
実力が全くないわけではないと思っているが、運の部分もあると思っている。
褒めてくれているのは分かったので、その思いは有り難く頂戴しよう。
これは本音を聞き出すには時間が掛かるかもしれない。
どっちかというと戦闘よりも指揮命令をするほうが似合いそう。
俺の直感は殆ど当たらないんだけど、これに関しては当たってると思う。
「敬礼のことは分かったけど、呼び名は変えてほしいな。
俺の直属の部下ってわけでもないし、適当にフランクな感じで呼んでくれる?」
「え?」
「言っとくけど、これは命令って言ったほうが効果があるかい?」
おどけるように軽く肩を竦めると彼は小さく笑った。
やっぱり、笑顔もガキンチョだなと感じる。
何かを真剣に考え込んでいる彼を何をするわけでもなく眺めていた。
「では、ナイルさんで良いでしょうか?」
唐突に切り出された言葉に俺は大笑いをしてしまう。
真剣な表情で何を考えているかと思えば、自分の呼び方を馬鹿丁寧に考えていたなんて。
大笑いしてしまった俺を困惑した表情で見つめているので笑いを堪えた。
いやぁ、腹筋が痛いくらいに笑わせてくれるもんだ。
素直で誠実なガキンチョということは充分すぎるほどに分かる。
「ああ、それで構わない」
「目上の人に対しての接し方が余り分からないので…」
「気にするこたないさ」
やっぱり、このガキンチョは普通すぎる。
この残酷で不条理な世界で生きていくには『異常』くらいが丁度良いのに。
頭のネジが吹っ飛んでるくらいのほうが簡単に生きていける。
俺も何処か頭のネジが吹っ飛んでるんだろうなと自覚はしていた。
紳士に見えるエルヴィンも仲間意識の高いリヴァイも頭のネジは吹っ飛んでる。
ハンジは会話からして吹っ飛んでるから特に何も思わないが…。
「それで、俺に何か…?」
「いや、新しいリヴァイ班でやっていけるのか聞いてみたくてな」
俺の言葉に気まずそうな表情を浮かべて、少しだけ俯いてしまうガキンチョ。
これは聞いちゃ駄目な感じの質問だったみたいだ。
質問してしまったものは仕方がないので言葉を待ってみる。
「…正直、分かりません…」
本当に素直で純粋なガキンチョなんだな、コイツは。
これからの戦いで辛いことが多く圧し掛かってくるに違いないと直感で思う。
どんなカタチで圧し掛かってくるかまでは分からないが…。
間違いなく最前線で色んな葛藤を繰り返さなければならないだろう。
正直、そこまでリヴァイが気を回してやれる余裕があるのかも謎だと思った。
「兵長の言う通り、俺は『死なない工夫』をするしかないと思ってます」
「あのリヴァイが?」
新兵に対して、そんな気の利いた台詞を言うような男だったのか。
それかリヴァイは彼を気に入っているのかもしれない。
頭のネジが吹っ飛んでる分、マトモなヤツを傍に置いておきたい気持ちも分かる。
「まあ、頑張りな」
「有り難う御座います、ナイルさん!」
「何かあったら、話くらいは聞いてやるよ」
「よろしくお願いします!」
馬鹿丁寧に頭を深々と下げているガキンチョの頭を軽く叩いた。
それから少し歩いたとことでリヴァイの姿を見つける。
今日は調査兵団に出会う機会の多い日だな。
「お前の部下、有能そうで羨ましいよ」
「あ?」
「ジャン・キルシュタイン、憲兵団に引き抜きたいくらいだ」
「俺の部下に手ェ出すんじゃねェよ」
殺気が半端ないのを感じて、あのガキンチョはリヴァイの『特別』なわけだ。
このままだとマジで削がれそうなので「冗談だ」とだけ告げる。
まあ、少しだけ本気だったけど…。
これからの成長に期待すると共に俺は見守ろうじゃないか。
ガキンチョのジャン・キルシュタインを…。
ただの好奇心でな。
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